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事業内容
金融
2021-07-16

壁際元金融マンのひとりごと~「運転資本」

ハンズオン支援部 喜悦

1.勘定合って銭足らず

壁際元金融マンです。ここからは小職のこれまでの経験を交えつつ「ひとりごと」をつぶやいて参ります。

今回は先ほど運転資金の説明を記入しているときにふと思い出した「運転資本」についてお話させて

いただきます。

皆さんは「勘定合って銭足らず」ということわざを耳にしたことがおありでしょうか?

金融、会計業界において「必要運転資金」を説明する際によく利用され、「たとえ黒字であっても資金繰りが ショートすることもある」現象を端的に表現しております。

「赤字ならわかるが黒字なのに何故お金が足りなくなるのか」とお感じになった方もおられるでしょうが、実際の現場ではよくある現象です。

特に売上(収入)が増えている局面では資金不足に注意が必要ですので後段で詳しくご説明いたします。

2.運転資本

運転資本は「事業継続のために最低調達しておくべき運転資金の金額」といわれており、売上債権(売掛金)+棚卸資産(在庫)-仕入債務(買掛金)で計算されます。例えば、売掛金1,000万円、在庫1,000万円、買掛金1,000万円であれば、運転資本は1,000万円ですね。

比較的簡単に計算できるこの「運転資本」ですが、金融機関の融資審査上は「融資のイロハ」の「イ」といっていいほど使用しております。小職も審査セクションに在籍していた時分は念仏のように計算を繰り返しておりました。運転資本は事業を継続するために必要不可欠な資金であるため大事に、丁寧に計算しておりました。

3.運転資本は変動する

事業継続に大変重要な運転資本。計算方法はそれほど難しくはないのですが、この運転資本、厄介なことに常に変動するのです。

先ほどの例で例えると、売掛金が2,000万円に増えると運転資本は2,000万円となります。運転資本は事業継続に必要な運転資金ですので、 売掛金が増える → 運転資本が増加 → 資金の準備が必要 ということになります。

逆に買掛金が2,000万円に増えた場合、運転資本はゼロとなります。

実は日々事業活動を行っていると、運転資本は常に変動しています。仕入れをして、販売をして、支払をするたびに、各残高が増減するからですね。

運転資金は日々事業活動を行う中で、運転資本がピークとなる点に合わせて調達しておく必要があり、決算日や月末がそのピークとは限りませんので、ピークを探し出すために金融マンは念仏のように運転資本の計算を繰り返すのです。

4.医療機関のケース

医療機関の場合、開業時に収入2か月程度の運転資金を検討するのが一般的です。これは診療報酬が2ヶ月サイト(2ヶ月後に入金)であることから妥当な水準と言えますが、

収入が想定より多かった場合には注意が必要となります。

収入が増えた場合、運転資本が増加しますので、運転資金を調達しないと資金が回らなくなりショートする可能性が高まることになるからです。

収入が増えて黒字になっても資金は回らない。これが正に「勘定合って銭足らず」の状態です。こんなことがあってはせっかくの頑張りがもったいないことになりかねません。

収入が想定以上に増加することは開業時に限らず常に起こりうることですから、収入が増えた際は「資金繰りに影響あるぞ」と覚えておいていただけたらと思います。

5.最後に

今回は運転資本についてほんの一部分のみ説明をさせていただいております。

資金不足となる要因は他にもたくさんございますので次の機会に取り上げたいと思います。

昨今の金融機関は「資金使途(実際資金が何に使われるか)」を重要視して融資審査を行うトレンドとなっております。審査ポイントを予め知ったうえで借入申込を行うほうがよりストレスなく話を進めることができると思いますので、少しでも参考にしていただければ幸甚です。

新型コロナウィルスはいまだ終息せず、皆さまにおかれましても感染防止に大変な努力をされているところかと存じます。

何かと不便の多い今日ですが、この状況が一日も早く解消され、平穏な日々が取り戻せるよう心から願っております

最後までご覧いただき大変ありがとうございました。

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