病院は地域になくてはならない施設である一方で、多くの病院が経営難に陥っているのも事実です。一般社団法人 日本医療法人協会が発表している「2022年度 病院経営定期調査-集計結果(概要)-」によれば、2021年度における赤字病院の割合は72.5%となっています。2018年から2021年まで4期続けて赤字病院の割合は60%を超えており、多くの病院が経営難に陥っている現状です。
病院として運営を継続するためには、黒字経営を安定して続けるための経営戦略を立てなければいけません。
今回は病院経営において大切なことをまとめて解説いたします。
病院経営について大切なことは何か、そして経営における現状を正しく把握するにはどうするべきか解説しているため、病院経営の課題にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
病院経営は、ただ医療従事者を雇って患者の受け入れ体制を整えるだけではうまくいきません。
患者流入を増やす工夫はもちろん、人件費をはじめとした経費のやりくりについて計画的に検討していくことが求められます。
まずは病院経営における本質とは何か、2つのポイントで解説します。
病院も経済活動を行うための1つの組織であり、会社などと同様に利益を出すための経営戦略を立てることが欠かせません。
そのためには病院という組織を運営するうえでのマネジメント能力やリーダーシップが必要です。
収益を増やし経費を抑えるには何ができるのか、ほかの病院と差別化するにはどうするべきなのか、シビアに検討し経営に落とし込んでいくことが求められます。
これは患者が必要なときにすぐに利用できる環境を用意するためだけでなく、病院で働く医療従事者やスタッフを守るうえでも大切なことです。
必要な医療設備を十分に機能させるため、医療従事者が「長く働きたい」と思える環境を用意するためにも、経営者として病院経営に責任を持たなければいけません。
病院に限らず、経営においてまず大切なことは、現状の経営状態について正しく把握していることです。
現在の経営状態を正確に把握していなければ、どう改善していくべきなのか、正しい改善案を出すことはできません。
そして経営状態を把握したうえで、経費を抑え収益を増やすための生産性向上や、中長期的な黒字経営の計画を立てる必要があります。
長く愛される病院として経営を続けるためにも、正しい把握と経営戦略への落とし込みを検討することが、黒字経営に成功している病院の共通項だといえます。
病院経営において大切なこととして、4つのポイントが挙げられます。
ここでは病院経営を黒字化させるうえで知っておきたいポイントについて、さらに詳しくご覧ください。
病院の収益の根幹となるのが、患者の診察や施設利用です。
そのため病院を開いても医療の品質が悪ければ、2度目以降の来院を望める可能性は低くなります。
対して医療品質が高く、患者に「この病院で診てもらいたい」と思われる病院になれば、患者にとっての担当医として長く通ってもらえます。
さらに利用した患者が家族や知人に勧めたり、SNS等への口コミ投稿が増えれば、患者満足度の高さが新規患者の流入にも繋がるでしょう。
そのため医療品質を高め、患者に長く愛着を持って通ってもらえる病院を目指すことが、病院経営においてまず大切なことだといえます。
安定した黒字経営を目指すうえで、組織全体の財務状況を細やかに把握し管理することは欠かせません。
そのうえで大切なのは、現在の経営状況や経費、人件費の運用実態を正しく把握することです。
経費がどれくらい掛かっているのか、無駄な経費を使っていないか、正しく把握して検討しましょう。
また見逃しがちなポイントが、古くからの慣習をそのまま放置していないかどうかです。
勤続年数などをもとに従業員の給与を無条件で評価していないか、使っていない医療設備に多額の経費を使っていないか。
地方病院の場合は特に、地域の人口推移に対して病床数が適切かどうかを検討することも忘れてはいけません。
健全な財務状況であるか、社会情勢や地域の医療に関する需要も含めて見直しを検討することが大切です。
医療品質を検討すると同時に、医療従事者の離職率を下げることも検討しましょう。
医療従事者を育成する仕組みを作れたら、医療品質を高めることはもちろん、医療について学びたい人材を流入することにも繋がります。
また、従業員にとって信頼のおける病院の経営体制を整えて、長く働きたいと思ってもらえる病院を目指すことも欠かせません。
離職率が下がることは、求人や人事労務にかける経費を抑えるうえでも重要です。
従業員満足度を高めることは、病院経営における黒字化を目指すうえで非常に大切なことだといえます。
デジタル化とAIツールの導入は、経費削減と従業員の業務効率化において重要です。
デジタル化により書類のペーパーレス化が進めば、紙の書類を管理する経費を削減できるだけでなく、検索機能等を導入することで必要な書類をすぐに取り出せるようになります。
書類管理や作成業務をAIツールにより簡略化できれば、病院経営における事務作業をさらに効率化できるでしょう。
またWEBサイト等に診察予約の窓口を設けるなど、患者の来院管理をデジタル管理できるようになれば、予約管理業務の効率化も目指せます。
患者にとっても病院管理における利便性も高まるため、デジタル化は院内の業務効率化と患者流入、両面から見てメリットのある経営戦略です。
病院経営において大切なこととして、今の経営状況を正しく把握し、なぜ経営が赤字化しているのかから検討する必要があります。
病院経営が赤字化する原因として、以下の内容が挙げられます。
・人件費が経費を圧迫している(業務の煩雑かや高齢化に伴う賃金引き上げ等)
・病床稼働率が下がり診療報酬に対する施設管理費が増えている
・新型コロナウイルスの感染拡大等による医療現場の急変による経費圧迫
日本では少子高齢化や地方の過疎化など、わずか10〜20年程度で時代が大きく移り変わっています。
労働人口の高齢化により賃金の引き上げが求められるほか、地方での病床稼働率低下は、病院の経営状態の見直しにおいて重要なポイントです。
さらに2020年代には新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染防止のため病院の利用を敬遠する人が増えた一方で、消毒液やパーテーションなど感染症防止に必要な経費も増えました。
そのため病院経営においては、時代に即した病院経営の課題にいち早く気付き、対処していくことが求められるでしょう。
病院が経営難に陥る原因として、複数が挙げられます。
・人件費や設備投資費が多く収益を圧迫している
・過疎化や周辺病院の増加などにより患者が減少している
・患者満足度が低くSNS等でネガティブな評価が広まっている
何が原因であるかによって、病院経営の黒字化に向けて何を改善していくべきかは変わります。
経営状態を改善するために動いても、根本的な原因に対処できていなければ経営状態を良くすることは叶いません。
病院の運営状態や経営体制を刷新することにも、時間や経費が掛かるからこそ、経営が赤字化している原因を正しく突き止めて、効果的なアプローチを検討しましょう。
病院経営において大切なことは、経営が苦しくなっている原因を正しく把握し、より良い経営体制を目指すための効果的なアプローチを見つけることです。
患者数が減っていることが課題なのか、経費に圧迫されているのかはその病院によって異なるため、まずは病院の経営状態を正確に見つめ直したうえで、改善策を検討しましょう。
しかしながら、なかには病院経営を見直そうと思っても何から手をつけて良いのかわからない方もいるのではないでしょうか。
MMCコンサルティングは、独自のノウハウを備えたアドバイザーが依頼を受けた病院に直接赴いて、病院経営における課題や改善アイデアを提案しています。
またこれからの病院経営において注目されている事業継承や介護事業への参入についても、適切なサポートを行っています。
病院経営の見直しにお悩みなら、MMCコンサルティングにご相談ください。