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2023-08-21

【完全ガイド】病院買収と売却方法や算出方法

医療法人(病院)は国内全体の8割が赤字経営※に陥っており、買収や合併(M&A)を経営戦略に組み込む団体も増加傾向にあります。そこで知っておきたいのが病院買収における価格の推移や評価方法です。病院の買収価格は収益性の高さや患者数、将来性などさまざまな観点をもとに検討する必要があります。

今回は病院買収における国内の現状について解説します。病院の適切な買収価格の算出方法や病院買収を成功させるコツについても触れているため、病院経営や買収にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

※出典:2020年度 病院・診療所の経営状況(速報)

病院買収の現状と市場トレンド

日本国内の病院経営は以下の原因や課題により、買収や売却を検討する医療法人が増加傾向にあります。

・少子高齢化に伴う人口変動による医療需要の変動

・社会保障制度の変革による医療制度や診療報酬の厳格化

・医療従事者の高齢化や働き方改革に伴う賃金引き上げ

・物価高に伴う経費や病院維持費の増大

・新型コロナウイルスの感染拡大による診療控えや経費の増大

・病院経営者や医療従事者の後継者不足

そのほか、日本国内では社会情勢の変化を受け、現状維持では病院経営が苦しくなる一方となっています。そのため病院の買収や売却、M&Aを検討する医療法人も増えており、医療業界でもトレンド化しています。

医療業界のM&Aトレンドと将来性

赤字化が止まらない病院経営においてトレンドになりつつあるのがM&A(合併買収)です。M&Aとは1つの法人が別の法人を買収し統合することを指し、病院経営においては以下のメリットが存在します。

・経営を一本化でき、後継者不足を解消できる

・地域での病院経営を存続させられる

・黒字化に成功している医療法人の経営ノウハウを取り込める

・従業員の雇用口を確保できる

M&Aを行えば、黒字経営している医療法人のノウハウを落とし込んで病院を経営できるため、経営の安定化を見込めます。さらに閉院や法人の解散を行う必要もなくなるため、従業員の雇用口を確保したまま医療法人を買収・売却でき、従業員を守るうえでも役立つ手段です。

もちろん闇雲にM&Aを推進しても、買収した医療法人の収益性や将来性が見込めなければ、買収側の法人が自分の首を締めることになってしまいます。そのため医療業界では、以下の要件を検討して買収するか否かを検討することがトレンド化しています。

・買収先の病院の立地や不動産的価値

・集客力を左右する口コミ評判の有無

・医療従事者や従業員を引き継げるか否か

・収益性の高い診療科目に対応しているか否か

・周辺の医療機関と連携が取れるか否か

近年ではインターネットやSNSでの口コミ評価をもとに病院を選ぶ患者が多く、病院の口コミ評価を検討することは、集客力を評価するうえで非常に重要です。また病院経営においては、各医療機関の強みを活かし患者により良い医療を提供できるよう、周辺の医療機関との連携も非常に重要なため、連携を取れる立地や横の繋がりの有無についても検討する必要があります。

病院の買収を検討する際は、昨今の医療における需要や病院の収益性・将来性を検討したうえで買収するか否かを検討することが非常に大切です。

病院の価値を見極め、適正な買収価格を設定する

病院の買収や売却を検討する際は、病院の価値を適切に見極め、適正な買収価格を設定する必要があります。ここでは病院の適正な買収価格を設定するための手順について、具体的に解説します。

病院の価値評価と価格算出方法

病院の買収価値を評価し価格を算出する方法として、2つの方法が挙げられます。

・時価純資産価額法

 「病院の純資産+営業権」をもとに病院の価値を金銭的に検討する方法

・DCF法

 「病院のキャッシュフロー期待値をWACC(加重平均資本コスト)で割り引いた時価」

なかでも主流とされているのが、時価純資産価額法による買収価格の評価方法です。時価純資産価額法は負債を差し引いた純資産を金銭的に評価する方法で、将来性や集客力を買収価格に換算せずに病院の営業権に金銭的価値を付けます。

買収価格の評価指標

純資産に基づいた病院の価格評価と、将来性や収益性の有無は別物です。特に病院買収においては収益を高めるため、将来性や集客力に優れた医療法人を買収する必要があります。そのため病院の買収価格を検討する際は、以下の基準を以って価値を評価する場合もあります。

・医療従事者やスタッフを引き続き雇用できるか(引き継ぎやすいか)

・今までの収益や業績が上々で、将来的な収益も見込めるか

・院内設備が充実しており状態も良いか

・公共交通機関によるアクセスが良好な立地であるか(不動産的価値の良し悪し)

・内科や外科など需要がなくならない診療科目に対応しているか

・病院の口コミ評判や地域住民からの認知度が高いかどうか

・周辺の医療機関との連携がスムーズであるか

・持分ありの医療法人であるか(平成19年4月以前に設立された医療法人か)

そのほか、病院の買収価格はさまざまな観点から評価され、収益性が高い・買収側がコストを掛けずに事業継承できる病院は価格を高く設定できます。

病院買収の法的側面を把握する

病院の買収の際は、ただ売却価格をやりとりするだけでなく、法的な側面からもリスクや価値について検討する必要があります。ここでは病院買収における法的な要件や買収リスクについて詳しくご覧ください。

買収の法的流れと要件

病院の買収における法的な流れは以下の通りです。

1.M&A仲介会社等を介して、買収先を選定する

2.買収先とマッチングのうえ、買収するか否かを検討する

3.機密保持契約を交わしたうえで、詳細な条件を交渉する

4.基本合意が整ったら、病院の買収価格や収益性を検討する

5.買収先の病院の価値を詳細に評価する(デューデリジェンス)

6.最終交渉のうえ、買収契約を締結する

7.M&Aを成立させる(クロージング)

M&Aは病院同士で話し合うのではなく、専門の仲介会社を介して行うことが一般的です。病院の買収価値を慎重に検討したうえで、最終的な買収の決断を行う必要があります。なお最終的な買収決定(クロージング)において、医療法に基づき以下の法的手続きを行う必要があります。

・合併や吸収分割契約の締結

・吸収合併(分割)契約の承認決議

・都道府県への認可申請

・債権者や労働者の保護手続き

・合併や分割の登記

その他買収においては、医療法により法的手続きについても計画的に進める必要があります。法的手続きの手順や要件についても、仲介会社や専門家を頼って進めていくことが、病院買収をスムーズに成功させるポイントです。

病院買収のリスクとその対策

病院を買収するリスクとして、以下が挙げられます。

・補助金や助成金の返済(返還)義務も買収側が負担する必要がある

・買収や売却において、多額の税負担が生じる恐れがある

・買収成立後に従業員が離職してしまう恐れがある

買収した病院がかえって負債に変わったり、従業員も引き継ぐはずが従業員本人の合意を得られず離職してしまう恐れがあります。そのため病院を買収する際は、以下の対策を行いながら進めることが大切です。

・補助金や助成金の返済義務の有無を確認しておく

・持分所有の有無を確認し、買収における税負担を検討する

・従業員の労働環境に対する評価やモチベーションについても事前調査しておく

・労働条件の維持や勤続年数の通算について契約書で明確にしておく

病院買収における税金は、買収側はもちろん売却側にも生じる可能性があります。特に病院の純資産を出資者が所有する持分ありの医療法人の場合は、買収における税金が高額になる可能性もあるため、税金の支払額も具体的に検討したうえでM&A契約を進めてください。

病院買収を成功に導く戦略

病院買収を成功に導くには、以下の戦略について具体的に検討する必要があります。

・買収の流れや手続きをリスト化し、計画的に買収契約を進める

・スムーズに買収契約を進めるため、信頼のおけるM&A仲介会社を利用する

・労働契約を明確化し、買収先の医療従事者やスタッフの流出を防ぐ

病院の買収やM&Aでは、法的手続きや買収先との交渉を慎重に進める必要があるため、タイムスケジュールを組んで計画的に手続きや交渉を進める必要があります。契約をスムーズに進めるには信頼のおけるM&A仲介会社を利用することも大切です。

手続きのサポートや仲介できる医療法人の豊富さ、成功報酬をはじめとした料金設定は仲介会社によって異なるため、仲介会社選びを慎重に行うことも、M&Aを成功させる一環だといえます。また病院同士がM&Aに合意しても、従業員の合意を得られなければ従業員が離職してしまう可能性があるため、スムーズに事業継承を進めるため労働契約を明確化することも大切です。

以上のポイントをふまえ、病院の買収と収益拡大に成功したM&A事例についてご紹介します。

効果的な買収戦略と成功事例

地方都市で病院を運営していた医療法人Aは、物価高騰による設備費の増大と新型コロナウイルスの感染拡大による資金繰りのひっ迫により、経営破綻に陥っていました。そこで医療法人Bは医療法人Aの病院の買収を決定し、課題を洗い出すことで経営刷新をはかりました。

事業継承と病院運営において、医療法人Bは引き継いだ病院にて以下の内容の強化に乗り出します。

・地域周辺の医療機関との連携強化

・地域での需要が高い救命医療の強化

以上の戦略により病院の立て直しを図り、病院の買収は成功を収めました。なお買収における価格評価では、債権債務の継承はされていません。事業権のみを評価して買収価格を検討することでM&Aに成功しています。

買収後の病院運営改善までも任せられるのはMMC

病院買収における価格検討は、病院の純資産や将来性・収益性をふまえて評価することが通例です。医療業界では病院の赤字経営が深刻化しているからこそ、ただ病院を買収して事業拡大するのではなく、収益拡大を見込める買収先であるか正しく検討したうえで、買収を成功させましょう。

病院の買収や資産価値を検討する際は、病院同士で相談交渉するのではなく、専門のM&A仲介会社を頼ることが大切です。

MMCでは、独自のノウハウを持つスタッフがお問合せいただいた病院に直接赴き、病院経営における課題やM&A計画の提案を行っています。M&Aを成功させるための戦略提案や、病院の資産価値を高めるためのノウハウについても提供しているため、病院経営やM&Aにお悩みの方はぜひご相談ください。

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