日本国内では業界を問わずM&Aを進める企業や事業者が増加傾向にあります。2021〜2022年には日本企業が関わるM&Aの件数が2年連続で4,000件を超え※、今後もM&Aを進める企業は増えていくことが予測されます。
増加している理由には少子高齢化に伴う後継者不足や社会情勢の変遷などさまざまなものが挙げられますが、M&Aが事業拡大や経営再建のきっかけになるケースも多く、戦略的に進めていくことが重要です。今回は、M&Aの基本的な仕組みとともに、M&Aが増加傾向にある理由や成功させるコツについて解説します。
※出典:MARROnline|1985年以降のマーケット別M&A件数の推移
M&Aが増加傾向にある昨今ですが、そもそもM&Aとは何か、いまいちピンときていない方もいるのではないでしょうか。まずはM&Aとは何か、その定義や種類について解説します。
M&AとはMergers&Acquisitionsの略語であり、日本語に直訳すると「合併&買収」を意味します。1つの企業が別の企業を買収し、1つの企業として合併することが主なケースで、国内外問わずM&Aを進める企業が増加傾向にあります。
M&Aは主に以下の目的や意義を持って行われます。
・人材不足や人手不足の補填
・他社の技術やノウハウの獲得
・事業拡大や販路拡大
M&Aは負債化した企業や事業を売却する目的だけでなく、両社の事業拡大など双方がより良い経済活動を行う目的でも行われるため、1つの手段として検討することが大切です。
M&Aにはさまざまな手法が存在します。
・吸収合併:売り手企業を消滅させ買い手企業に経営権を継承する方法・事業譲渡:企業が行う事業の一部を他社に譲渡する方法
・株式譲渡:株式の一部を譲渡し経営権を移す方法
・会社分割:売り手企業の事業の一部を権利含め買い手企業に継承する方法
M&Aというと、まず吸収合併を思い浮かべる方が多いですが、自社の一部事業を譲渡する形でM&Aを行う場合もあります。いずれの方法も、買い手・売り手双方にとってメリットのある方法でM&A契約を結ぶことが重要です。
M&Aは国内外企業で増加傾向にあり、効果的に進めることで双方にメリットのあるM&A契約を目指せます。ここではM&Aが増加している理由について、3つを解説します。
少子高齢化に伴い、後継者不足に悩まされている企業は増えつつあります。高齢でも現役の経営者として活躍しているケースも少なくありませんが、なかには後継者がおらず次の世代になかなか引き継げずに経営者として籍を置いているだけの場合も少なくありません。
特に医療業界では、医師免許をはじめ難関資格を取得することが後継者の必須条件となる場合も多く、後継者を確保する難易度はさらに高まるでしょう。高齢であればあるほど、いつかは限界が来てしまいます。このとき自社内に後継者がいない場合、他社に企業を売却する形でM&Aを決断しています。
社会情勢は目まぐるしく変化しており、今までの企業経営では無理が出るケースも多く存在します。
・少子高齢化による深刻な人手不足
・急速なIT化社会に対する対応不足
・国内の人口減少や市場のグローバル化
人口減少は働き手不足はもちろん、市場にも影響をもたらしています。特に若い働き手はどんどん減っており、人手不足により十分な事業展開がままならない企業が少なくありません。かといってITシステムの導入により効率化をはかるノウハウもなく、経営が難航している企業が増えつつあります。
しかし社会情勢に対応した経営ノウハウのある企業とのM&Aを計画することで、目まぐるしく変わる社会情勢にも対応した経営体制を目指せるでしょう。
M&Aを行えば事業拡大はもちろん、人材不足や業務効率化ノウハウの流入による経営再建も期待できます。異なる業界で活躍する2社がM&Aを行えば、双方の強みを活かした新たなサービスの提供や市場の拡大を目指せるほか、他社の経営ノウハウを活かすことで社内の課題を解決することも可能です。
そのためM&Aは日本の企業や事業者同士で増えていることはもちろん、海外企業と日本企業がM&Aする動きも増えつつあります。海外企業とM&Aを締結すれば、海外まで市場を広げたり、経営体制や働き手も海外から流入することでも、経営再建を目指せるでしょう。
M&Aの市場は少子高齢化や目まぐるしく変わる経済市場を理由に増加傾向にあり、将来的にもM&Aを決断する企業は増加することが予測されます。M&Aの市場動向について、日本国内の現状はもちろん今後の展望についても知っておきましょう。
日本国内では少子高齢化や若い世代の働き手不足が深刻化しており、M&Aを決断する企業は増加傾向にあります。MARROnlineが発表した「1985年以降のマーケット別M&A件数の推移」によると、M&Aの年間件数は40年弱でおよそ10倍にも増えており、特に日本国内企業同士のM&Aの件数が飛躍的に上がっていることが現状です。
特に日本国内では、病院同士のM&Aも増えつつあります。日本では少子高齢化による後継者・働き手不足はもちろん、保険診療の運営難化により、補助金がなければ8割以上の病院が赤字化するともいわれています。そのため売り手側は黒字病院の経営ノウハウの流入を、買い手側は医療提供の場の拡大を目的とした病院同士のM&Aも増加傾向にあります。
国内外問わず、今後もM&A市場は拡大することが予測されます。M&Aが増加している原因である少子高齢化や人口減少は今後も続く見通しであり、M&Aを経営再建や事業拡大の手段として採用する企業は今後も増加するでしょう。
特に今後は日本の人口減少による国内市場の縮小に伴い、海外への事業展開を目的とした海外企業とのM&Aも増加する可能性があります。さらにM&Aを行う企業や事業者が増えたことで、M&Aの認知度向上やM&Aコンサルティング事業の拡大も見せています。M&Aが経営における選択肢の1つとして広まった今だからこそ、M&Aを検討する企業や事業者はさらに増えていくでしょう。
M&Aにより事業拡大や経営再建を図るなら、成功に導くコツやポイントを押さえることが重要です。
・M&Aにおける目的や課題、ゴールを明確化する
・長期的な相談や交渉を見越して早めに行動する
・M&A相手の企業について念入りにリサーチする
・M&A仲介会社やコンサルティング会社に相談する
M&Aを効果的に経営戦略に組み込むのであれば、まずM&Aの目的や課題を明確化し、早めに行動することが重要です。そのうえで、M&Aに詳しい仲介会社やコンサルティング会社に相談して、M&Aにおけるノウハウを学びながら相手企業を探すのも良いでしょう。
株式会社Aは自社が運営する病院を医療法人Bに譲渡する形でM&Aを成立させました。株式会社Aが運営する病院施設は、社員の福利厚生の確保と自社技術の医療機関への導入を目的に病院経営を行っていましたが、当時株式会社Aは企業全体の経営難に悩まされていました。
そこで医療提供の質を確保するため、医療法人Bに病院経営を譲渡することで、一部事業の譲渡と売却益の確保に成功します。医療法人Bは収益性を見込める救命救急やリハビリテーション医療の提供も充実しており、M&Aにより譲渡された病院も自事業の経営ノウハウと医療提供により、社員と地域住民にとってより良い医療を提供できる病院として運営継続に成功しました。
国や業界にかかわらず、M&Aを推進する企業や事業者は増加傾向にあります。M&Aが増加している理由として、後継者不足や経営難の立て直しなどさまざまなものが挙げられますが、なかにはさらなる事業拡大や経営体制の刷新など、ポジティブな目的でM&Aを採用する企業や事業者も増えています。
MMCでは、特に病院のM&Aや経営再建を主軸にコンサルティング事業を展開しています。病院経営に関する豊富なノウハウを持つスタッフが、直接病院に赴き経営に関する提案やサポートを行っているため、医療事業のM&Aにお悩みの方はぜひMMCにご相談ください。