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2023-08-21

【医療法人のM&A】持分所有の意味と影響、成功の秘訣とリスク管理

医療法人や病院のM&Aを検討するなら知っておきたいのが、持分所有の有無です。持分所有とは、法人経営の合併や買収において出資者に財産権があるかどうかを意味します。

一見すると買収された側にも財産権がある持分所有ありの方が魅力的に見えますが、売却した医療法人の評価額に応じて、売却した側には所得税が・買収した側には贈与税が発生するため、持分所有の有無については慎重に検討する必要があります。

今回は医療法人のM&Aにおいて知っておきたい持分所有の仕組みとともに、M&Aを成功させる秘訣とリスク管理のポイントについて解説します。

M&Aにおける持分所有の役割と影響

医療法人のM&Aにおいて、持分所有とは出資者の財産権の有無を指します。例えば医療法人を解散するにあたって、持分所有があれば解散時の保有資産から一定の純資産を出資者に払い戻すことが可能です。ただし払い戻しに際して所得税が発生する場合もあるため、持分所有があることはメリットばかりとはいえません。

参考:厚生労働省|第2章 持分によるリスクについて

持分所有とは何か?

持分所有とは、1つの財産を複数人で共有した際に発生する所有権を指します。医療法人に限らず不動産や土地、企業などさまざまなものに発生しうるもので、特にM&Aをはじめ法人の売却や合併に際しては、権利関係を明らかにする一環として、持分所有についても明確にしておく必要があります。

特に医療法人の持分所有に関して、平成19年4月1日以降は持分ありの医療法人を設立できなくなりました。これにより、医療法人における純資産の所有権は以下のように変わります。

・持分所有あり:資産を築いた出資者に配分される

・持分所有なし:資産額にかかわらず国(または他の医療法人)のものになる

つまり持分所有について、平成19年4月1日以降に設立された医療法人の場合は出資者本人に資産が戻ってくることはありません。持分所有なしの場合、病院の純資産は解散した場合は国に、M&Aの場合は買収した医療法人に移ります。

また平成19年の新法の施行に伴い、平成19年4月以前に設立した医療法人についても、持分所有なしへの移行が推進されていますが、ほとんどの医療法人は持分所有ありを選択しています。持分所有なしにすると、解散時に病院の純資産がすべて国に渡ることに抵抗感や不公平感を感じる出資者が多いためです。

そのため持分ありの医療法人は2021年段階で全体の6割以上※に上ります。ただし新たに持分所有ありの医療法人を設立できなくなった現状から、持分所有ありの医療法人の割合は徐々に減っていくことが予測されます。

出典:日本医師会|日医総研ワーキングペーパー

持分あり医療法人と持分なし医療法人M&Aの問題点

医療法人の持分ありと持分なしでは、M&Aにおいてそれぞれ異なる問題点が存在します。ここでは持分所有の有無により生じる医療法人M&Aの魅力と問題点をそれぞれご覧ください。

持分あり医療法人(旧法)のM&A

平成19年以前に設立された持分ありの医療法人は、出資持分(出資者が出資額に応じて医療法人に対して有する持分割合=財産権のこと)の保有者が医療法人に属していれば払戻請求権が認められ、出資額に応じた資産の払い出しを請求できます。

しかし、持分あり医療法人がM&Aする場合、純資産を多く抱えており評価額が高まりやすいため、買収する側から見ると買収額の負担が大きくなる傾向にあります。特に買い手にとって魅力的な条件が揃った医療法人は評価額が上昇するため、M&A時の売却額はさらに膨らむでしょう。

また、売却する側は評価額が大きければ大きいほど多額の所得税も発生します。医療法人は非営利団体であり利益分配が認められていないため、事業が成功していればいるほど、所得税額も大きくなることは、知っておきたい課題です。

そのため持分ありの医療法人のM&Aを検討する際は、従業員の退職金や役員報酬を捻出しておくことなどにより、可能な限り医療法人の資産を減らしたうえで売却することが通例です。

持分なし医療法人(新法)のM&A

持分なしの医療法人の場合、買収する医療法人の純資産は国のものとして渡されるため、贈与税について考える必要はありません。退職金や役員報酬についてもあらかじめ利益から捻出しておくことが可能なため、売り手側も資産を受け取ることは可能です。

しかし退職金等で払い出しができない資産があれば国に寄付する必要があるため、資産についてはあらかじめ慎重に把握しておく必要があります。

リスクを抑えつつ医療法人のM&Aを進める方法

持分ありの医療法人をM&Aする場合、売却における評価額の検討や贈与税の計算などさまざまな課題が存在します。

出資持分の払戻額が大きくなればなるほどトラブルやリスクも生じやすいため、リスクを抑えてM&Aを進められるよう、計画的に進めましょう。

ここではリスクを抑えて医療法人のM&Aを進めるための4つのポイントについて解説します。

事前評価とデューデリジェンスの重要性

まずはM&Aを進めるにあたって、あとから予期せぬリスクやトラブルが見つかることを防ぐため、買収先の評価額や買収リスクの有無に関して事前評価を行います。特に医療法人のM&Aにあたって検討したいのがデューデリジェンスです。デューデリジェンスとは、組織の運営体制や買収における価値やリスクについて評価することを指します。

特に医療法人のM&Aにおいては、法務・財務・税務分野でのデューデリジェンスが重要であり、専門家に依頼することで慎重に検討することが大切です。特に医療法人は一般企業とは経営体制や資産管理における仕組みが大きく異なるため、専門家の力を頼って事前評価を進めることがおすすめです。

M&Aによる事業拡大とイノベーション

M&Aした病院は赤字のリスクを抑え、より地域に根差した医療を提供するため、事業拡大やイノベーション戦略を立てる必要があります。そのうえで大切なのは、現行の病院の経営戦略や経営ノウハウをM&Aした病院に落とし込むだけではありません。

病院グループ全体で運営や患者管理の連携を進めるにはどうすれば良いのか、現行の運営体制や医療設備に無駄はないか検討したうえで、経営におけるリスクを減らしより良い経営体制へとイノベーション(変革)していくことが求められます。

その病院の立地や地域との連携、周辺地域における医療の需要をもとに経営方針を検討し、より利益を高められる経営戦略を立てることが求められます。

医療法人M&Aのお悩みはMMCへ

医療法人は平成19年4月の法改正を機に、財産権の有無により持分所有ありかなしかが分かれることとなりました。現在は持分所有ありの医療法人が過半数を占めますが、平成19年の法改正により持分所有ありの医療法人を設立できなくなったことから、その割合は持分なしへと偏ることが予測されます。

M&Aにおいても、資産が国に流れない持分ありの医療法人に人気が偏っている傾向にあり、買収の際は資産の分配や事前評価、成長戦略について慎重に考える必要があります。特に病院経営はおよそ8割が赤字に陥っているデータも存在するため、M&Aは慎重に進める必要があるでしょう。

MMCでは、独自のノウハウとフォロー体制により、病院の経営課題を洗い出しM&A計画の提案を行っています。M&Aにおける経営指導や条件交渉まで幅広く承っているため、病院経営やM&Aにお悩みの方はぜひご相談ください。

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